日本酒の味の違いはつくり方の違い!日本酒ができるまでの3つのステップ
「日本酒って、こんなに味が違うの?!今まで知らなかった!」
国際唎酒師・日本酒学講師・酒匠の私、藤代あゆみが、日本酒セミナーをしたときに、参加してくださった方に言われたこの言葉。よく日本酒を飲む人であれば、甘口や辛口にはじまり、いろいろな味や香りがあることを知っているかもしれませんね。一方で、あまり日本酒を飲んだことがないと、日本酒の表現の広さを知ったとき、とても驚きます。ですから、日本酒を一回飲んだとき、あんまり好きじゃなかったとしても、別のタイプの日本酒を飲んでみたら、日本酒が大好きになることだってありえるんです。
この味の違いは、日本酒がどうやってつくられたかで変わるので、今回は日本酒の製造方法について、シンプルにわかりやすく、ご説明したいと思います。
でも!自分が飲んだ日本酒がどのタイプなのか、そもそもわからないことだってありますよね。そんなときは、まずこちらの記事「【永久保存版】もう迷わない!日本酒選びの3つの基礎知識」を読んでみてくださいね。
日本酒をつくるための3つのステップ
日本酒を飲んだことがあっても、どんな風につくられているのか、知っている人は少ないかもしれません。お米でできたお酒なので、ワインやビールよりも、もっと多くの作業があって、酒蔵さんが一生懸命つくってくださっています。
大きくわけると、3つのステップでおこなわれます。
1. 原料のお米
2. アルコールづくり
3. 完成に向けて
それぞれ詳しくみていきましょう!
1. 原料のお米
ふだん私たちが食べるお米は白いですね。でも、もともとは茶色い玄米で、まわりを削ったから白い部分が出てきているんです。日本酒も同じで、まずは玄米を白米にします。家でご飯を炊くのと同じように、白米を洗って、少しお水に浸けて、それが終わったらしっかり水を切ります。家と違うのは、日本酒の場合はご飯を「炊く」のではなく、「蒸す」ところですね。余談ですが、この水を切る作業を英語では”draining water”(ドレイニング・ウォーター)と言い、炊飯器でご飯を炊くときも、この作業をしっかりやってから、水を入れ直すと、もっと美味しくなるんだそうです!
次に、蒸したお米に麹(こうじ)をつけます。麹は菌のひとつで、お米につけるとお米を甘くしてくれるんです。ご飯を口に入れてじっくり噛むと、甘く感じることがありますが、それと同じ作用をしています。アルコールを作るには、この甘さが必要なのですが、酒蔵の人が全部のお米をむしゃむしゃと食べる訳にはいきませんので、麹菌の力を借りています。
2. アルコールづくり
日本酒の原料であるお米が甘くなったところで、アルコール発酵をおこないます。お米をタンクに投入し、酵母という菌を入れることで、酵母がお米の甘みを食べて、アルコールをつくってくれるのです。しかし、アルコールをつくるときには、酵母以外にもさまざまな菌が活動するので、間違って腐らないようにしなければなりません。そこで、酒母造り(しゅぼづくり)という作業をします。
このとき活躍するのが、なんと乳酸菌!乳酸菌と聞くと、ヨーグルトなどをイメージするかと思いますが、ヨーグルトがお腹の調子を整えてくれるように、アルコール発酵をしようとしているお米が入ったタンクの環境を整えてくれます。乳酸菌は空気中にも存在するので、昔は乳酸菌がタンクの中に入ってくれ、育つのを待っていましたが、最近では乳酸をタンクに入れてつくるのが主流です。
日本酒のラベルに「生酛(きもと)」と書いてあるのをみたことがありませんか?これが、昔ながらの日本酒のつくり方で、乳酸菌が育つのを待つ方法です。英語だと”lactic acid bacteria growing method”(楽ティック・アシッド・バクテリア・グロウイング・メソッド/※lactic acid bacteriaは乳酸菌のこと)といいます。乳酸を入れてつくる方法は、日本語では「速醸(そくじょう)」といいますが、英語では”lactic acid addition method”(ラクティック・アシッド・アディション・メソッド)なので、英語がちょっとできる人ならば、日本語よりもわかりやすいかもしれないですね!
さて、タンクの中が整ったところで、本格的にアルコールを発生させていきます。これが醪造り(もろみづくり)です。醪ってなんとなく聞いたことがあるけど、実際なんだかよくわかりませんね。醪は英語で”mash”(マッシュ)というのですが、マッシュポテトを思い浮かべてみてください!固かったお米が、柔らかくドロドロになったような状態です。この状態でブクブクとアルコールをつくっていきます。
3. 完成に向けて
日本酒を飲むとき、ほとんどの場合は透明な液体ですね。お米の粒なんて見当たりません。アルコールが十分に発生したら、まずはお米を取り除く作業を行います。これを、つい濾過すると言いたくなってしまうのですが、そうではありません。醪を袋に入れて、ぎゅっと絞るのです。ここでも英語がわかりやすいのですが、”pressing”(プレッシング)と呼ばれ、思いっきりプレスする=押し付けることで、液体だけを絞り出すんです。
そのあと、日本酒の味わいを整えたり、お酒が長持ちできるようにしたり、さらに作業が進んでいきます。濾過や火入れ、貯蔵に調合、割水(わりみず)など、さまざまな工程を経て、日本酒はボトルに入れられて、栓がされるのです。
私たちが美味しく飲むまでには、こんなにたくさんの作業があったんです!
日本のつくり方がわかっても・・・
ラベルを見ただけで、その日本酒の味が簡単に想像できればいいのですが、もっと細かい日本酒の製造方法を知らないと、判断が難しいのが現状です。そんなときこそ、唎酒師のいる居酒屋やレストラン、酒販店にいくのもいいアイディアです。日本酒のプロ、唎酒師や国際唎酒師の人たちは、資格をもっている=しっかりと知識をもっています。そして、唎酒師は日本酒の「提供」のプロです。日本酒を知らないあなたでも、「ちょっと聞きたいんですけど・・・」なんて声をかけたら、きっと喜んで説明してくれると思います。さけぱるを読んで、日本酒の基礎的な知識を身につけるもよし。唎酒師の人たちと交流するのもよし。日本酒をもっと楽しんでもらえたら嬉しく思います!
日本酒の基礎知識を英語でも学ぼう!
アルクの英語学習誌『ENGLISH JOURNAL』2022年10月号(2022年9月6日発売)の「学習コーナー」の”Lecture”(レクチャー)にて、「おとなが愉しむ Sakeの時間 第1回」を寄稿しました。日本酒の基礎知識や、季節の日本酒について、英語と日本語で解説しています。この【さけぱる】を運営する日本酒サービス研究会・酒匠研究連合会(SSI)にもご協力をいただいて、日本人でも意外と知らない日本酒の魅力をお伝えしています。
この記事では、日本酒がどのようにつくられているのかについて、少しマニアックな説明をしましたが、「もっと基礎的なことから知りたい!」なんてあなたは、ぜひこちらの雑誌もチェックしてみてくださいね。
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【参考】
・『新訂 日本酒の基』(NPO法人FBO)
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ライター紹介🍶
藤代あゆみ
平成元年、東京生まれ、共立女子大学文芸学部劇芸術コース卒。日本酒サービス研究会・酒匠研究会連合会(SSI)公認国際唎酒師・日本酒学講師・酒匠。「日本酒オタクのあゆみせんせい」として、シンガポールを中心に、アジア、オセアニア、ヨーロッパ、北米、南米など世界20カ国以上の人に向けて日本酒を広める活動を経験。平尾アウリ先生のマンガ『推しが武道館いってくれたら死ぬ』(徳間書店)が死ぬほど好きと言い続けたら実現したENGLISH JOURNAL ONLINEの連載がパワーアップして『推し英語入門』(アルク)として書籍化、好評発売中!
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