HOME 記事 ワインを知る・学ぶ もう二度と味わえない?ワインを取り巻く環境変化が及ぼす影響 もう二度と味わえない?ワインを取り巻く環境変化が及ぼす影響 2022.03.24ワインを知る・学ぶ ワインは世界の多くのお酒の中でも最古のお酒の1つと言われています。『さけぱる』読者の中にも愛飲している方は多いのではないでしょうか。 昨今、このワインに“ある変化” が表れ始めていることをご存じでしょうか? 今回は、ワインについて。 特にワインを1つの“農産物”という視点からお話ししていきます! ワインが農産物ってどういうこと? ご存じの通り、ワインの原料はブドウです。 このブドウに含まれる糖分を酵母がアルコールに変えることでワインができ上がるという、とてもシンプルな発酵形態なんです。 シンプルゆえに、ブドウ内の糖分を含めた酸味・渋味・苦味などの成分がどれくらい含まれているかが、でき上がりの味わいにそのまま反映されます。 そしてブドウのできの良し悪しは、その年の天候などの自然環境が大きく影響を与えているんです。 よく「2001年のボルドー産赤ワインは。。。」や「2009年のボジョレー・ヌーヴォーは50年に1度の出来栄え!」などのコメントを見たことはありませんか? これらのコメントは、“その年のブドウのでき栄え”を現した表現でもあるんです。 よって、ワインは自然環境に左右されやすい“農産物”であるとも考えることができるわけですね。 こう考えると、私たちが日ごろ食べている野菜や果物と全く変わらないことがわかりますね。 ワインは自然と一体! 2021年のフランスにおけるワイン生産量は過去50年において最も少なくなるのでは、と言われています。 大きな原因は、春の霜(しも)や夏の※1“べと病”など。 春の霜による影響は、1991年と2017年にもありましたが、2021年はこれよりも被害が大きいようです。 フランスのほぼすべてのワイン産地が暖冬となったり、ブドウの芽が出始めていた4月前半に数日間連続して霜が降りてしまったことで、特にシャルドネとメルロの被害が大きかったそうです。 また、夏は雨量が多く、※2“うどんこ病”や“べと病”が多発しました。 シャンパーニュ地方では南部のシャルドネの新芽が“べと病”の被害にあい、ボルドー地方は4月と5月に霜が降り、アルザス地方はカビや“べと病”の被害にあいました。 このように農業災害が多かったことから、フランスの農務大臣は「今世紀初頭の最大の農学的災害」と発表しています。 ワインの香りと味わいは原料のブドウの良し悪しにかかっていますが、様々な被害のあった年ではその後の収穫量や品質に大きな影響が出てきてしまいます。 まさに“ワインは自然と一体”と言えるのではないでしょうか。 ※1 べと病:湿度の高い時期に発生しやすく、花・葉・果実部に白い胞子が発現し腐敗する ※2 うどんこ病:茎に赤い斑点が発生し、顆粒が白い胞子で覆われる。果粒が割れる。 今後のワインのでき栄えはどうなっていくのでしょうか? もちろん自然のことは正確には予想できませんが、言えるのは世界規模で“温暖化”などの気候変動が進んでいる、ということです。 悩む名産地と新たな名産地 世界規模で進む“温暖化”などの気候変動によって、多くのワイン名産地で被害が続出中です。 まずは主だった被害を整理してみましょう。 ◇気温が高くなりすぎる。(特にジリジリした熱さはNG!) 適度な気温は必要ですが、温度が上がりすぎるとブドウの糖度が高くなりすぎる、アルコール度数が高くなる、酸味不足になる、などの被害が挙げられます。 ◇頻繁に霜や雹の被害にあう 春の発芽時期の霜は畑に大きなダメージを与え、芽が凍結して育たなくなってしまいます。 雹は大敵、ブドウを全滅させるおそれも。 ◇過剰な雨 成長が早くなりすぎて顆粒が膨張。糖度が上がらずに酸味が強くなってしまいます。色素の薄い実に。 以上のようなブドウの成熟過程の変化はすでに30年程前から現れてきています。 弊害をいくつか挙げましたが、例えば、温暖化の影響によりブドウの“成熟が早くなってしまう”こと。 これは、ブドウの“成熟が早くなってしまう” ことで、糖度やでき上がったワインのアルコール度数が高くなってしまい、触感の重々しいワインに変化してしまうことが問題となります。 欧州やアメリカの一部のような“さわやかなワインを目指す造り手” にとっては、ワイナリーのアイデンティティが崩壊しかねない程の大問題なんです! しかし一方で、この温暖化を好機ととらえる地域もあります。 例えば例年、ブドウの成熟が心配されるフランス北部のシャンパーニュ地方はこの心配がなくなりましたし、フランスより北に位置するイギリスも同様にブドウが良く生育するようになったようです。 続いて、ヨーロッパから目線を日本に移してみましょう。 日本にも様々な地域にワイナリーがあり、現在、山梨県・長野県・北海道は生産量と品質共に日本ワインの名産地とされています。 これからは山形県をはじめとする東北地方などの寒冷地でもワイン生産量が伸びるのでは?と予想する方も多いようです。 今後も、世界のワイン生産マップに少しずつ変化が起きることは間違いありません。 新たなワイン名産地が誕生することはとても嬉しいことですが、しかしその裏では他の名産地が危機に瀕していることも忘れてはいけないですね。 【参考】 ・『酒仙人直伝よくわかるワイン』 (NPO法人FBO(料飲専門家団体連合会)) ・『Le Vin C’est Pas Sorcier』 著者:Ophlie Neiman ・WINE REPORT 2021年8月10日掲載記事 【注意事項】 ・記事、データ等の著作権その他一切の権利は日本酒サービス研究会・酒匠研究会連合会(SSI)に帰属します。 ・記事・データ等は予告なく変更する場合がありますのでご了承ください。 ライター紹介🍶 さんちゃそ 作って食べて飲むことが、趣味であり人生最大の楽しみ。 その過程で学んだ副産物を「知識のメモ」として記事に残しています。 ワインをもっと知りたい人におすすめの書籍や資格情報 Tweet Share RSS この記事のタイトルとURLをコピーする ワインを知る・学ぶ 人を楽しませるには知識も必要!確かな知見と日本酒好きの情熱を併せ持つ唎酒師・酒匠ー純米酒専門店YATA渋谷店 山本聖治さんー 日本酒まずはここから! 1銘柄1豆知識 ~純米吟醸酒 原酒 亀泉CEL-24(亀泉酒造)~