“下戸”や“左党”など 専門用語(隠語)の由来を優しく解説!

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お酒には様々な専門用語がありますが、今回はお酒の“飲み手”を表した専門用語(隠語)をいくつかご紹介します。
また、各専門用語の由来は諸説あるので、今回ご紹介するもの以外の説も興味のある方はぜひ調べてみてくださいね!

“上戸”と“下戸”とは

諸説ある中でよく取り上げられるものとしては、今から1300年程前、平安時代の「大宝律令」という法律が挙げられます。
当時、法律では家族の人数や資産によって“大戸(たいこ)・上戸(じょうこ)・中戸(ちゅうこ)・下戸(げこ)”と呼ばれる四等戸に区分けがされていました。
例えば、青年男子が8人以上いる家は大戸。6〜7人の家を上戸、4~5人なら中戸、3人以下なら下戸といった具合です。

この“戸”の基準は一家にいる成人男性の数で、働き手が何人いるかといったもの。
なので働き手の多い家庭にはより重い税がかけられていました。
また、“戸”とは律令制における課税単位のことで、負担する税の多い大戸や上戸の方が身分も上とされていたんですよ。

さらに、当時は各集落で婚礼などのお祝い事が行われる際にはお酒が分け与えられていて、その量も決まっていました。
より納税額の多い大戸や上戸の方が与えられるお酒の量も多かったのだそうで、上戸の酒八瓶に対して下戸は酒二瓶など、四等戸の最下級である下戸には僅かなお酒しか与えられなかったとか。
この事が後に、下戸が“体質的に酒を飲めない人”を意味するようになり、逆に“酒飲み”を上戸と呼ぶようになったのだそうな。

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さらに、酒飲みを超える“超大酒飲み”を大戸と呼ぶこともあるそうですよ!

ちなみに、“泣き上戸”や“笑い上戸”など、上戸の前に他の言葉を付けて、酒に酔った時に出る癖を表す場合もありますね。

“左きき”と“左党”とは

これは酒飲みを指す隠語で、江戸時代の大工や鉱夫に由来します。
ドリルやダイナマイトがない時代に大工や鉱夫に欠かせない道具はノミとツチでした。
一般的には右手にツチ、左手にノミを持つことから、右手の事をツチ手、左手の事をノミ手と呼んでいたそうです。
そこからノミ手が“飲み手”に語呂が合わされて、お酒好きのことを“左きき”または“左党”と呼ぶようになったのだそうな。

ちなみに、庶民の間で使われたお酒好きの隠語は“左きき”と“左党”で、貴族の間で使われたお酒好きの隠語は“上戸”という言葉だったそうです。
酒飲みを上戸、飲めない人を下戸というのは、実は高貴な言葉だったのかも?

酔っぱらいを指す“虎”とは

日本の中世の※女房詞でお酒のことを“ササ”と呼んでいました。
このことから“ササ”に“笹”をかけて、“笹に虎”の絵を連想することから酔っぱらい=虎となったんです。
その他にも、“寅の刻(現在の午前4時ごろ)まで酒を飲んでいるから”、とする説もあるそうですよ。

※女房詞(にょうぼうことば)=室町時代初期ごろから宮中の女官たちが使った一種の隠語

大酒飲みを指す様々な専門用語(隠語)

・笊(ざる)

お酒をぐびぐび流しこむように飲む様子が、まるで笊に水を注いですり抜けていくように見える事から呼ぶようになりました。
お酒が留まらずに底が無いという意味合いでも使われます。

・枠(わく)

“お酒の引っかかる場所がない”ということで笊を越えた大酒飲みのことを表します。
どれだけお酒を飲んでも表情や態度が全く変わらない人に向けた隠語です。

・うわばみ

“うわばみ”とは大蛇を表すこと言葉で、蛇が獲物を丸呑みにするようにお酒を飲む様に見える事から大酒飲みの隠語となりました。
ちなみに、“うわばみ”という言葉自体は古代語の“オロチ”に代わって15世紀頃から使われはじめました。
このことから大酒飲みを表す“うわばみ”の由来は、八塩折(やしおり)の酒によって退治された八岐大蛇(ヤマタノオロチ)なのではないか、とも言われています。
古来の自然崇拝や蛇信仰にも通じる日本らしい呼び名でもありますね。

まとめ

今回は酒飲みを表す専門用語(隠語)をご紹介しました。
ご紹介した名称で呼ばれた方はいらっしゃいますか?笑

人類にとってお酒は永遠の友です!(お酒は人類をどう思っているかは分かりませんが。。。)
長く美味しくお酒と付き添っていくためにも、休肝日を設けたり、適正飲酒を心掛けましょうね。

【参考】
・『新訂 日本酒の基』(NPO法人FBO(料飲専門家団体連合会))
・『酒仙人直伝 よくわかる日本酒』(NPO法人FBO(料飲専門家団体連合会))
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