ー静岡ー雄大なる「富士の湧水」ー富士錦酒造ー

日本一の山、富士山のさまざまな姿を眺望できる静岡県富士宮市。富士山の西南麓に位置し、山頂までを市内とすると高低差が日本一の市になります。

自然と文化が息づく、豊かな水に恵まれた地

富士山信仰の中心である「富士山本宮浅間大社」の門前町として古くから栄え、近年は「富士宮焼きそば」などのご当地グルメでもにぎわいを見せる、自然と文化が息づく地です。

見どころの一つは、やはり富士山本宮浅間大社。国連教育科学文化機関(ユネスコ)の世界文化遺産「富士山-信仰の対象と芸術の源泉」の構成資産となる神社で、全国に祀られた1300余りの浅間神社の総本宮と称されます。
境内にある湧玉池は、湧出する富士山の雪解け水からなり、特別天然記念物にも指定されています。JR身延線富士宮駅から徒歩10分と観光に便利な場所にあり、11月には平安時代から続く、湧水と稔りの秋に感謝する「例祭」が催されます。

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水にまつわる見どころはまだありますよ!

さらにもう一つ、水にまつわる見どころとして「白糸ノ滝」があります。こちらも構成資産になっています。

富士山にしみ込んだ雪解け水が、上部の水を通す地層と下部の水を通さない地層の間から湧き出す滝は、その名の通り幾筋もの白い絹糸を垂らしているかのような美しい景観です。
滝の高さ約20メートル、幅約150メートルにわたる断崖から流れ落ちる毎秒1.5トンの水に涼を求め、夏は多くの人でにぎわいます。

静岡県で最も古くから日本酒を造る酒蔵「富士錦酒造」

その白糸ノ滝の近くにある蔵元が「富士錦酒造」です。
元禄年間の創業以来、豊かな自然が育んだ富士山の伏流水を仕込み水として使用しています。
蔵で300年間培われてきた伝承技法を駆使し、18代にわたり日本酒造りを続けてきた、静岡県で最も長い歴史を誇る酒蔵です。

富士錦酒造の井戸から上がる伏流水は軟水のため、醸されるお酒の口当たりはとても柔らかく、まろやかなものとなります。「静岡型吟醸」という言葉に象徴されるその特徴は、静岡県の蔵元たちが行きついた地酒の味わいそのものといえます。

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300年続く歴史ある伝承技法でまろやかに醸されたお酒「富士錦」、飲んでみたいですね!

「富士錦」という酒銘は、十四代目清宗内(せいそうない)の弟清崟太郎(せいきんたろう)と親交があり、東京市長時代に米国のワシントンに桜の苗木を贈ったことでも知られる尾崎行雄(号・咢堂)が、1914年(大正3年)に蔵元を訪れた際、夕日を受けて輝く富士山と紅葉の美しさに感動し、崟太郎が国会議員として故郷に錦を飾ったことと重ね、「富士に錦なり」と発した言葉から誕生しました。

戦前までは地域の地主を生業としており、田んぼの貸し代として納めてもらった米で清酒を造り始めたのが、富士錦酒造の酒造りのきっかけでした。
売るためではなく、小作農への褒美や当時唯一の娯楽であった秋祭りへの奉納酒としてお酒を造っていたところ、終戦後の農地改革や企業整備といった政府の政策の影響で田を失い、酒造りを本業とすることになりました。

富士錦酒造は、「町おこし」の一環として、25年前から毎年3月に「蔵開き」を開催。例年は一日に全国から1万人を超える来場者であふれ、蔵出し新酒の味を堪能する人でにぎわいをみせます。
残念ながら昨年に続き、今年もコロナ禍で中止となってしまいましたが、代わりにオンラインで「おうちで蔵開き」を実施するなど、工夫を重ねています。

雄大な富士山を思い描き、その湧水で造られるお酒を飲みながら、再び蔵に集える日を願うのが、今できる楽しみ方なのかもしれません。

【文章引用元】
・交通新聞 2021年5月28日発刊『美酒漫遊の旅㊳ 雄大なる 富士の湧水』より

【参考URL】

・交通新聞電子版 https://news.kotsu.co.jp/
・富士錦酒造(静岡県富士宮市)https://www.fujinishiki.com/

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