日本酒のソムリエ?“唎酒師”ってどんな資格?

https://sakepal.jp/wp-content/uploads/2022/03/e3d450a949ee2e99781867b0672c42ec-300x300.jpg

こんにちは!日本酒のきき酒師の漫才師「にほんしゅ」の北井です!

今回は、“日本酒のソムリエ”と言われる「唎酒師」がどんな資格なのかについて、唎酒師歴8年の私なりの視点を織り交ぜながらお話しいたします。
「どんな人が受験してるの?」「試験は難しい?」「ただの日本酒好きが行ったら場違いなの?」などなど、色々と不明点や不安な点があるかと思います。
漫才師である私も唎酒師の受験前は正直不安でしたが、試験にチャレンジして良かったと思っています!唎酒師受験にまつわる情報をお届けいたします。

「唎酒師」ってそもそもどんな資格?日本酒好きなら誰でも取れる!?

そもそも唎酒師とはどんな資格かと一言でいいますと、「日本酒の提供・販売のプロフェッショナル」ですね!
30年ほど前に唎酒師という資格をつくった方々はなんと、ワインのソムリエさんたちなのです。

世界で戦えるレベルの日本の若手ワインソムリエさんたちが海外のワインのコンクールにも「ワインの知識なら本場のソムリエにも負けないぜ!」と気合い満点で参戦したのですが、コンテストの合間に世界のソムリエさんたちに聞かれるのは「お前たちの国には米の酒があるだろう?どんな製法なんだ?ワインとの違いは?どうやって飲むんだ?」などなど出身国のお酒・日本酒についてばかり。
日本酒については全然答えられずに苦い思いをされたそうです。
「ワインを語るには日本酒も語れなければ!」と痛感したトップソムリエさんたちの行動によって日本酒のソムリエ「唎酒師」が誕生したのです!

、、、こういう歴史を知ると一段と「や、やっぱり難しい資格なんじゃないか!?」と思われるかもしれませんが、そんなに心配することはありません。
唎酒師の歴史がスタートした頃は酒販店や居酒屋・レストランなどの現場で働かれる方や、現場のプロではなくてもものすごく日本酒に詳しい「飲み手のスーパープロフェッショナル」なおじさんなどの割合が高かったそうですが、近年はまったく様相が変わってきています。

私は2014年に2日間で集中して受講受験をするコースで取得したのですが、その時の男女比は半々ぐらいで、20代〜60代ぐらいの幅広い年齢層でした。職業も様々。酒販店の方や、「脱サラして居酒屋をやる予定なんだよ!」みたいなおじさんがいたり、新潟で日本酒発信の団体をしている方、大企業に勤める日本酒好きの方、そして我々みたいな漫才師がいたり。
本当にいろんな方と交流できて楽しかったのですが、それも「日本酒が好き!」という共通する思いがあったからでしょうね!

ここ数年の受験者の多様化は一層進んでいて、大学生で受験する方も増えていたり、日本酒が趣味だというシニアの方が受けておられたり。年齢や性別、職業のジャンルなど、ご自身の条件で受験を躊躇する理由は全くないと思われます。試験はそれなりの難易度ですが、過去問もありますし試験対策をしっかりやれば合格が難しい資格ではないと思います。

https://sakepal.jp/wp-content/uploads/2022/03/e3d450a949ee2e99781867b0672c42ec-300x300.jpg

資格を取得するのに「日本酒好きなら誰でもOK!」なプロフェッショナルの資格、それが唎酒師です。

唎酒師はどんなことを学ぶ?

唎酒師の試験をクリアするために勉強するテキスト『もてなしの基』と『新訂 日本酒の基』はかなりのボリュームですが、お酒や食品の基礎知識がかなり広く学べますし、日本酒の原料や製法、歴史といった日本酒そのものに関する知識を深めることができます。

『新訂 日本酒の基』ではそういった基礎知識プラス、日本酒にまつわる近年のトレンドや業界全体を取り巻く状況なども把握できます。
ここまで総合的な日本酒の知識を網羅しているテキストはなかなか無いと思いますので、どんな勉強をするのかが気になる方はまずテキストのみを購入するのもいいかもしれません。
私はお酒に関する漫才やコラムを書くのがメインの仕事ですが、『新訂 日本酒の基』をしょっちゅう引っ張り出してきてネタ作りの参考にしているぐらい有用なテキストです!

テイスティングって難しい?

唎酒師の試験では、製法や原料などの語るための知識の試験もありますし、テイスティングの試験もあります。
また、テイスティングでどんな香り・味わいなのかを判定したら、それを「どういう温度や器で出すとより美味しく飲めるかなー?どんな料理と合うかなー?」と考えて提供に生かすためのセールスプロモーションの試験もあります。

「ただの酒好きの俺にそんなプロみたいなことができるんかいな!?ほんまに大丈夫かいな!?」という風に私も不安に思っていましたし、実際に唎酒師を取るとこんなことをよく聞かれます。
「唎酒師ってことは、目を閉じてお酒飲んで、どんな銘柄か当てられるの?」
無理です。笑 漫画の主人公が持つ『神の舌』みたいな能力は求められませんので大丈夫ですよ!

唎酒師のテイスティングに関しては、「日本酒ってさ、甘口・辛口だけじゃ表現できないよね!」という考えのもと、香りが高い・穏やか、味わいの濃淡を軸に考えて作られた「香味特性別分類(4タイプ)」というのがありまして、これを軸に勉強します。
日本酒をテイスティングしてこの4タイプのうち、どれに当てはまるかということを判定できるようになればOKです!「この日本酒はフルーティなタイプだなぁ」「今度はスッキリタイプだ!」「これは旨味しっかりタイプだ!」ぐらいのニュアンスがキャッチできるようになれば大丈夫ですよ。

鼻がいい人、舌がいい人というのは実際にいると思いますし、センスには個人差があると思いますが、4タイプを判定するトレーニングを繰り返しすればほとんど全員が合格できる程度の難易度だと思います。

唎酒師はどんな仕事に生かせる?

最後に、唎酒師を取ったらどんな仕事ができるか、どんなシーンで生きるか、というお話をさせていただきます。

唎酒師の認定団体、SSIさんのサイトの説明文を見てみると以下のように書かれています。
【唎酒師は、「お客さまに日本酒を美味しく飲んでいただくための資格」です。日本酒やもてなし技術などのさまざまな知識を学び研鑽を積んで、日本酒をもっと飲みたい!と思っていただくことが唎酒師の大切な役割です。】
その通り!だと思います。が、少しだけ付け加えさせてもらうなら、日本酒を美味しく飲んでもらう相手は「お客様」だけでなく、友達や家族、恋人、仕事仲間など自分が直接関係している全ての人だと思います。

酒蔵のスタッフさんや酒販店さん・飲食店さんの新入社員さんが基礎知識を得て現場で生かすのはもちろんのことですが、そのようなプロの方だけが取る資格ではなくなっていて、取り扱いや提供のプロの知識を持った「最強の日本酒応援団」というのが近年の唎酒師の確かな一面ではないでしょうか。

近年の唎酒師は「最強の日本酒応援団」!?

日本酒をより飲んでもらうために、テレビやWEBに広告を出してPRすることなどももちろん重要なことですが、「近くにいる唎酒師」の存在が日本酒の飲み手を増やしていく最大の原動力だと思っています。草の根活動がこんなに重要なお酒も無いんじゃないでしょうか。

日本酒というお酒は「友達や家族に勧めてもらって美味しかった!」というような自分ごとの体験があってこそ継続して飲んでもらえる確率が高まるものだと思います。
その実行役にうってつけなのが「最強の日本酒応援団」唎酒師ですね!

私の地元の同級生も「北井くんのSNSとか見て日本酒飲むようになったんやでー」「こないだ一緒に飲んだお酒美味すぎてまた自分で買ったわ!」などと言ってくれることも結構ありまして、これが漫才がウケた時と同じぐらい嬉しいんです。自分の活動によって日本酒を飲むようになった友達・知り合いが確実に増えました。
漫才師の私が資格を取った理由の1つにキャッチコピーがあることで活動のイメージをしてもらいやすいと思ったことです。僕に近い感覚で唎酒師を取得したお酒好きタレントさんやライターさんなんかも多いんじゃないでしょうか?
「酒好き漫才師・にほんしゅ」より「きき酒師の漫才師・にほんしゅ」の方が「おっ?日本酒に詳しいの?どんな漫才するの?」と思っていただけやすかったです。
わかりやすいキャッチコピーのおかげもあって様々な日本酒イベントやテレビ・雑誌・WEB媒体にもお声がけいただき、酒漫才やコラムを披露する機会をいただいています。

お仕事の現場や飲み会で人とのコミュニケーションを取るときに日本酒自身が人と人との距離を縮めてくれますが、さらにもう一歩距離を縮めてくれて、さらに新たな一歩を踏み出させてくれるのが「唎酒師」だと思います。
「名刺に『唎酒師』と書いているだけで取引先の方と会話が盛り上がり思いも寄らない仕事のチャンスが舞い込んできた!」とか「日本酒を飲む仲間がなかなかいなかったけどこんなに楽しい飲み仲間ができた!」なんてことはよく聞くお話です。

いかがでしたでしょうか?

今回の私の話にピン!とくるものがあったら唎酒師にチャレンジしてみてください!
その人ごとの好みに合いそうな日本酒をあれこれと勧めて、長く飲み続けてくれる日本酒ファンをともに増やしましょう!

https://sakepal.jp/wp-content/uploads/2022/03/e3d450a949ee2e99781867b0672c42ec-300x300.jpg

それでは今夜も日本酒で乾杯!

【参考】
・『新訂 日本酒の基』(NPO法人FBO)
【注意事項】

・記事、データ等の著作権その他一切の権利は日本酒サービス研究会・酒匠研究会連合会(SSI)に帰属します。
・記事・データ等は予告なく変更する場合がありますのでご了承ください。

ライター紹介🍶

(画像右)

北井一彰
『日本酒のきき酒師の漫才師「にほんしゅ」』として、相方のあさやんとともに全国のお酒にまつわるイベントでの日本酒漫才披露や司会、セミナー講師、各種メディア出演、コラム執筆などの活動を続ける。
【食卓には日本酒。話題には漫才師にほんしゅ。】を目標に、日々進化し続ける日本酒に追いつけるように奮闘中。
official website:http://nihonshu-sakemanzai.com/
Twitter:@nihonshukitai
Instagram:@kazuaki_kitai

日本酒をもっと知りたい人におすすめの書籍や資格情報

関連記事