冷酒?冷や?燗酒?日本酒に最適な温度帯とは
こんにちは!日本酒のきき酒師の漫才師「にほんしゅ」の北井です!
今回は「日本酒の飲用温度帯」について解説いたします。
キリッと冷やした冷酒から、冷や(常温)、燗酒まで幅広い温度帯で楽しめるお酒が日本酒です。
世界中のお酒の中で最も飲用温度帯が広いのが魅力でもありながら「この日本酒は冷やすの?温めるの?」という疑問は日本酒購入時につきものですね。
日本酒の香味のタイプによっておすすめの温度帯も変わるので、より美味しく日本酒を楽しみたい方はぜひ読んでみてください!
冷酒?冷や?燗酒?「日本酒の飲用温度帯」
日本酒は世界のお酒の中で最も飲用温度の幅が広いと言っても過言ではないでしょう。日本酒を楽しむ大切なポイントとなりますのでそれぞれの温度帯に分けておすすめの日本酒のタイプなどを解説してまいります。
冷酒の温度帯とオススメの日本酒タイプ
まずは冷やして飲む「冷酒」について解説していきたいと思います。
「冷酒」はやはり暑い夏におすすめしたくなりますね!
しかし、冬に出てくる「その年の新作」と言える「しぼりたて」なんかはフレッシュな味わいなので、冬でも冷酒がおすすめです。冷やすと香りが清涼に感じられ、味わいは引き締まって感じます。
「冷酒」と一言に言っても3つの温度帯があります。
①「雪冷え(5℃)」
②「花冷え(10℃)」
③「涼冷え(15℃)」
この3つの温度帯をお酒に合わせて使い分けるとかなりの日本酒通ですね!
雪冷え(5℃)におすすめなのは本醸造酒などに多い、香りが控えめで味わいが引き締まったドライなタイプ。
花冷え(10℃)や涼冷え(15℃)では吟醸酒のフルーティーな香りが最も感じられやすいので、香りを楽しみたいタイプの日本酒にはこのあたりの温度帯がおすすめです。
吟醸酒は5℃まで冷やしてしまうとフルーティな香りやスムーズな飲み口・柔らかな甘味が感じにくくなりますのでご注意ください。家庭用冷蔵庫から出してすぐ飲むと10〜15℃になることを覚えておくといいですね。意外と簡単です!
あと一点、「冷酒」と似た呼び方で「冷や」というのがありますが(次の段落で詳しく解説します)、冷蔵庫が普及した現代では「冷や」も冷やして飲む冷酒と同意で使われることも多いです。
しかし、冷蔵庫が普及する以前は日本酒の飲み方は「温める(燗酒)」か「温めない」かの2種類で、温めない(常温の)日本酒の飲み方を「冷や」と呼んでいました。
正確に温度帯を伝えたい時は「冷酒」と「常温」という言い方で使い分けるといいと思います。
冷酒で飲む時の酒器は、やはり清涼感を大切にしたいですね。キリッと引き締まった味わいの本醸造酒やキレのいいタイプの純米酒などは小ぶりで細長いグラスや、美しい切子グラスで飲むとより一層美味しく感じるでしょう。フルーティな香りの吟醸酒の冷酒ならワイングラスもいいですね。
冷や(常温)の温度帯とオススメの日本酒タイプ
続いては「冷や(常温)」に適した日本酒はどんなタイプかについて解説致します。ちなみに唎酒師のテキスト「新訂 日本酒の基」では20〜25度と定められています。
テーマは「旨味とコク」
・米と米麹のみで醸された「純米酒」
・乳酸菌の力を借りて手間暇かけて仕込む伝統的製法の「生酛(きもと)仕込み」や「山廃(やまはい)仕込み」の日本酒
・熟成期間を経て香り・味わいともに濃醇、複雑になった「熟成酒」
などなど、しっかりした旨味やコクのある味わいのものが向いていることが多いですね。純米酒や生酛仕込みなどでも繊細な味わいで冷酒向きのものも結構ありますので冷酒からから少し温度が上がった冷やの状態への変化を楽しみながら自分好みの温度を探してみてください。
「冷や(常温)」をより楽しむには酒器も重要!ということで、おすすめの酒器のタイプを紹介します。
テーマは「安心感」
冷や酒(常温)で飲む時の酒器は安心感を大切にしたいですね。「日本酒本来の旨味・甘味・コク」を楽しめる冷や(常温)は、「日本酒の器といえば?」で頭に浮かぶ、青色の二重丸が底に描かれた定番の蛇の目のお猪口や、備前焼や常滑焼などの素朴な陶器のお猪口・ぐい呑みなど「日本酒っぽいなぁ」とイメージしやすい酒器で飲むのが良いかと思います。
口当たりがまろやかに感じ、旨味や甘味が口中に広がり、一日の疲れが癒され、なんともいえない安心感に包まれることでしょう。
木製の酒器なども雰囲気がいいですね。木枡なんかで冷や(常温)のお酒を飲むと香りが良く、お酒の味わいもより柔らかく感じられますよ。
燗酒の温度帯とオススメの日本酒タイプ
最後は「燗酒」について解説いたします。
もちろん肌寒い秋冬におすすめの温度帯ですが、夏場にクーラーの効いた部屋で一日中仕事をする方なんかは身体が冷えていることも多いでしょうから、「夏こそカレー!鍋!」みたいな感覚で夏場にもぜひ飲んでみてください。
「燗酒」と一言に言っても5℃ごとに温度の呼び方が変わります。日本酒のタイプによってぬるめがいいのか熱々がいいのかが変わってきますので参考になさってください。
①「日向(ひなた)燗(30℃)」
②「人肌燗(35℃)」
③「ぬる燗(40℃)」
④「上燗(45℃)」
⑤「熱燗(50℃)」
⑥「飛び切り燗(55℃以上)」
「熱燗」というのは厳密に言うと50℃の燗酒のことだったんですね!でも難しく考える必要はありませんのでご安心を。むしろ燗酒はどんどん試してみることに面白さがあります。
いろいろなタイプの日本酒をいろいろな燗酒の温度で飲んでみてください。
「この旨味の濃い純米酒はちょっとぬるめがいいかな」とか「このキレのいいタイプの本醸造なら熱々の飛び切り燗までやってみようかな!」とか色々予想をしながら燗酒をつけられるようになってきます。
フルーティな香りの吟醸酒・大吟醸酒などは冷酒で飲むのが基本ですが、「あれ?この吟醸酒は旨味も結構あるぞ?」なんて思ったら燗酒にしてみるのもアリです!
家でやる限り誰にも文句は言われません。ぜひお家時間を豊かにする趣味に「燗酒」を!
燗酒をより美味しく楽しむための酒器は「冷や(常温)」のおすすめ酒器と大体同じです。柔らかい口当たりと共に旨味やコクをしっかり味わえる酒器がいいですね。
旨味がしっかりめの純米酒だったり生酛仕込みや山廃仕込みの日本酒などは、ぬる目の燗酒に仕上げて陶器のお猪口で飲むとよりまろやかに感じるでしょう。やはり原料が土の器(陶器)は味わいをまろやか・ふくよかに感じさせてくれます。
僕は日本酒を飲んでいくうちに自然と焼き物にも興味が出てきました。
日本酒の原料のお米や水はその土地の土とも深い関わりがありますね。なので岐阜の地酒なら美濃焼の器で!山口の地酒なら萩焼で!みたいな組み合わせで飲むと自然と一体感が増しますし精神的にもすごく満たされると思います。
本醸造酒系のキリッとしたアルコール感を楽しむ熱めの燗酒は大きめの蛇の目のきき猪口
などで飲むと日本酒らしい香りの出方も程よく、とても美味しく感じます。
5月(初夏)に飲むのにおすすめの日本酒のタイプと温度帯
5月になると日中は汗ばむ陽気の日も多いので冷酒で飲む日本酒が美味しく感じますね!
吟醸酒や大吟醸酒などのフルーティな香りとなめらかな甘味を持つ日本酒が最も美味しく感じられる季節ではないでしょうか。とろりとした甘味を持つ生酒なんかもこの季節にぴったりですね!
冷蔵庫で冷やした日本酒を取り出し、ワイングラスや切子のグラスなどに注ぎましょう!初夏の陽気を存分に楽しめるでしょう。
まとめ
日本酒の様々な温度帯について解説してきましたがいかがでしたでしょうか?
基礎知識を持ってきき酒を重ねるうちに「うーん、このお酒はもうちょっと冷やそうかな、いや、燗酒もありっぽいぞ!」などなど自分で温度を選べるようになってくるのも日本酒のおもしろさの一つです。
世界一飲用温度帯が広いお酒と言える日本酒の魅力を存分に、そして自由に楽しんでいきましょう!
それでは今夜も日本酒で乾杯!
【参考】
・『新訂 日本酒の基』(NPO法人FBO)
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ライター紹介🍶
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北井一彰
『日本酒のきき酒師の漫才師「にほんしゅ」』として、相方のあさやんとともに全国のお酒にまつわるイベントでの日本酒漫才披露や司会、セミナー講師、各種メディア出演、コラム執筆などの活動を続ける。
【食卓には日本酒。話題には漫才師にほんしゅ。】を目標に、日々進化し続ける日本酒に追いつけるように奮闘中。
official website:http://nihonshu-
Twitter:@nihonshukitai
Instagram:@kazuaki_kitai