年中行事“七夕”といえば、笹・酒・そうめん?

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こんにちは!日本酒のきき酒師の漫才師「にほんしゅ」の北井です!

日本酒が好きになっていくと「日本酒は歴史的・文化的価値のあるものなんだなぁ」とだんだんと気づくもので、日本らしい行事がある日や、お祝い事があるハレの日にとっておきの日本酒を飲むとより美味しく感じますね。

日本酒というお酒は、お酒としての味わいや「純米酒」「生酒」などのスペック、他の酒類と比べてのコスパなど、「商品」としての価値だけで語るにはもったいないお酒だと思います。

日本人としてより豊かな生活を送るためにうってつけのお酒が日本酒!今回は日本酒と共に文化として大切にしたい「年中行事」の「七夕」と結びつけてお話したいと思います。

年中行事とは?

お正月にはお屠蘇やお雑煮、お彼岸にはぼたもち、大晦日には年越し蕎麦など、深く考えることもなく小さい頃から自然と馴染んでいる行事とそれに合わせての食がありますよね?

しかし、その行事の由来などは案外知らなかったりするものです。恥ずかしながら私も日本酒のことを勉強し始めてから日本の年中行事についても少しずつ知っていきました。お酒と年中行事の繋がりは非常に深いんですね。

「年中行事」とは、年一定の時季に慣例として行われる儀礼を指し、中国では「歳時」や「月令」と呼ばれ、宮中や公家、武家、民間別に行われてきましたが、いずれも日本固有の風習と大陸由来の風習が混ざっているようです。

五節句について

そんな年中行事の代表に「五節句」があります。これは季節の節目に、五穀豊穣、無病息災、子孫繁栄などを祈るために神様へお供え物をしたり、邪気を祓ったりする行事を指します。

「節」は季節の変わり目を指し、「節句」は「節供」とも呼ばれ、神に供える食物を意味し、特にその季節の植物類を取り上げることが多く、お酒もよく登場します。五節句は唐(中国)から伝わっており、奇数を縁起の良い日と考えたことから奇数が重なる1月7日(元日の1月1日は別格とされたため、1月7日に定められた)、3月3日、5月5日、7月7日、9月9日を五節句と定めています。今回のメインテーマの七夕の節句以外を簡単にご紹介します!

・1月7日「人日(七草)の節句」
1月7日は人を占い、人を大切にする「人日」とされ、七草粥を食べ、1年間の無病息災を祈る。

・3月3日「上巳(桃)の節句」
旧暦3月3日が十二支の巳の日にあたることから「上巳の節句」と呼ばれ、女子の健康や成長を願う日とされ、「雛祭り」とも呼ばれる。江戸時代以降は「白酒(しろざけ)」を飲む風習が定着した。

・5月5日「端午(菖蒲)の節句」
端午とは、月の初めの午(うし)の日を指していたが、午が五に通じることから毎月5日を指すようになり、その後5が重なる5月5日を端午の節句と呼ぶようになった。また「菖蒲の節句」とも呼ばれており、「菖蒲を浮かべたお酒」を飲むなどの風習がある。

・9月9日「重陽(菊)の節句」
陽を意味する奇数の最大数である「九」が重なることから「重陽」または「重九」とも呼ばれ、五節句の中で最も縁起が良い日とされてきた。高貴な香りにより、邪気を祓い、延命効果があるとされる菊の花を浮かべた「菊酒」を飲む風習がある。

七夕には「笹酒」の新習慣?流しそうめんと共に楽しみたい!

それでは今回の本題の7月7日の「七夕(星祭・笹)の節句」についてお話していきたいと思います。

家庭では、短冊に願い事を書いて笹の葉に飾るのが一般的な七夕の風景ですね。七夕は、「棚幡(たなばた)」とも書きます。旧暦のお盆は7月15日で、7月7日はお盆の準備のために、ご先祖様を迎える「精霊棚(しょうりょうたな)」を設けて、幡を立てる風習が一般的でした。

それぞれの節句には邪気を払うために飲むお酒が決まっていましたが、7月7日は「一夜酒」、つまりノンアルコールの「甘酒」が飲まれていたようです。現在のように夏でも品質の安定したお酒が飲めれば良かったのかもしれませんが、冷蔵庫もない昔はお酒の保存状態が良くなかったこともあり、お酒ではなく甘酒が飲まれていたようです。甘酒は夏の季語ですし、夏バテをした身体に滋養強壮のためにもよく飲まれていたんですね!

しかし、七夕に関連しそうなお酒の情報が全くないわけではありません。七夕といえば笹ですが、「笹酒」はご存知でしょうか?

奈良県奈良市の大安寺に光仁会(こうにんえ)という、健康祈願、癌封じの「笹酒祭り」という祭りがあります。

先帝光仁天皇の一周忌の齋会(さいえ)を桓武天皇が文武百官(ぶんぶひゃっかん)を率いて大安寺で営んだという「続日本紀」の故事をもとに、毎年1月23日に行われる行事です。

奈良時代に即位し、健康長寿で知られる光仁天皇が若い頃に大安寺を詣で、竹にお酒を注いで召し上がったという話に由来します。癌封じの祈祷が行われ、健康を祈願します。
中高年の方を中心に毎年大人気で、当日は1万人を超える参拝者で賑わうこともあるようです。

また、大安寺では6月にも笹酒が振る舞われる「癌封じ夏祭り(竹供養)」が行われます。竹供養(夏祭り)の方は、古代中国において、陰暦5月13日(6月23日ごろ)が竹を植えるとよく育つ日(竹酔日)であることにちなんで行われているようです。

笹酒は、ビタミンやカルシウムを豊富に含むとされ、実際に健康に良いお酒とも言われているようですよ!

季節の節目に、五穀豊穣、無病息災、子孫繁栄などを祈るために神様へお供え物をしたり邪気を祓ったりする行事が「節句」ですから、笹酒は「七夕の節句」にもぴったりだと思いませんか?

通年安定した品質で日本酒が飲める現代では「夏酒」「夏の生酒」のように夏向けの日本酒ジャンルもあるぐらいですから、日本酒は選び放題です!お気に入りの日本酒でぜひ笹酒をやってみましょう!

新たな「七夕」の楽しみ方として、流しそうめんと笹酒を楽しむような行事・イベントが全国で立ち上がっていくと面白そうですね!

願いや意味は受け継ぎながらも「節句」の形は時代と共に変化していくものなのかもしれません。

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そんなことに思いをはせながら、今夜も日本酒で乾杯!

【参考】
・『新訂 日本酒の基』(NPO法人FBO)
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ライター紹介🍶

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北井一彰
『日本酒のきき酒師の漫才師「にほんしゅ」』として、相方のあさやんとともに全国のお酒にまつわるイベントでの日本酒漫才披露や司会、セミナー講師、各種メディア出演、コラム執筆などの活動を続ける。
【食卓には日本酒。話題には漫才師にほんしゅ。】を目標に、日々進化し続ける日本酒に追いつけるように奮闘中。
official website:http://nihonshu-sakemanzai.com/
Twitter:@nihonshukitai
Instagram:@kazuaki_kitai

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