ー広島ー竹原潤す地下水と龍勢ー藤井酒造ー

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今回は、『安芸の小京都』と呼ばれ、また製塩や酒造りの地として名高い広島の竹原をご紹介します!

歴史ある町並み『安芸の小京都』竹原

四季折々の豊かな産物をもたらす瀬戸内の海に面し、江戸時代には製塩業で繁栄した町・竹原。豪商の屋敷や寺の佇まいも美しく、平安時代から栄えた歴史あるその町並みから『安芸の小京都』とも呼ばれています。

2019年(令和元年)には、日本遺産「荒波を越えた男たちの夢が紡いだ異空間~北前船寄港地・船主集落~」の所在自治体として、文化庁から認定も受けました。

「竹原格子」と呼ばれる家ごとに異なるデザインが施されたフォトジェニックな長屋門の格子と、漆喰(しっくい)の壁とに彩られた町並みに身を投じれば、江戸時代にタイムスリップしたのかと、いささか錯覚してしまいそうです。

瀬戸内に臨む地の酒蔵「藤井酒造」

この竹原の地では、酒造業を伝統的産業としてきました。
豊富で清冽(せいれつ)な水に恵まれたこの地は、まさに酒造りにふさわしく、最盛期には26もの酒蔵がこの地で酒造業を営み、製塩業と双璧をなす産業として発展してきました。
その水質の高さは、今でも地下水を水道水として使用していることからも伺い知ることができます。

残念ながら現在、酒蔵は竹鶴酒造・中尾醸造・藤井酒造の三蔵だけとなってしまいましたが、いずれの酒も銘酒として全国に名を轟(とどろ)かせています。

瀬戸内の海を背に竹原の町並みを進むと、この三蔵の1つである「藤井酒造」(創業1863年)があります。藤井酒造の酒は、裏山にあたる龍頭山(守護寺照蓮寺の山号)の麓からの井戸水で醸し、高品質の酒ができたことから「龍勢」と名付けられました。
「龍勢」は全量純米仕込み、特に生酛(きもと)造りは酵母などの菌も添加しない生粋の伝統的な造りで醸されます。さらに令和に入り、大正初期に使用していた木桶(きおけ)を再生した木桶仕込みを行っています。
「原点を見直そう」と掲げた蔵の理念を表した酒、それが代表銘柄ともなっている「龍勢」です。

「龍勢」は創業銘柄であり、1907年(明治40年)に開催された『第1回全国清酒品評会』では、出品約3000点の中から日本一の栄誉に輝きました。
しかし、戦後の純米酒製造が禁止された時代に、三代目の「純米酒以外の“龍勢”は“龍勢”ではない」との想いから、一旦その歴史に幕を閉じることとなりました。

その“龍勢”が「当時は人気もあり、売れていたはずなのに、あえてそれを引っ込めてしまう先代のこだわりに応えたい」と、五代目蔵元の手により復刻を果たしたのです。

優しさあふれる酒造りで醸す「龍勢」

自然に任せて醸すというのは、実に手間のかかる製法ですが、それを一つ一つ丁寧に行い「龍勢」は醸し出されています。
一見、その名前と製法から荒々しいイメージを抱きがちですが、飲んでみると実に優しく、それでいて芯がしっかりした味わいの酒であることがわかります。

「泡の様子を見ると、毎回毎回違う酒になる気がして楽しみなんです。でも不思議と、皆どこか似ているところもあって。兄弟が似ている感じでしょうか」と、ほほ笑みながら語る五代目蔵元。その優しさがあふれた酒、それが「龍勢」なのでしょう。

【文章引用元】
・交通新聞 2021年7月29日発刊『美酒漫遊の旅㊵ 竹原潤す地下水と龍勢』より

【参考URL】

・交通新聞電子版 https://news.kotsu.co.jp/
・白瀧酒造 https://www.fujiishuzou.com/

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