-島根-不昧公ゆかりの地 松江の水-米田酒蔵

島根県の県庁所在地、松江市は山陰最大の人口を擁する都市です。市の北側は日本海に接する島根半島の山々、南側は中国山地に続く丘、東には中海、西には宍道湖が控え、市の中央を流れる大橋川がこれをつなぎ、国宝松江城の堀川から広がる水路が縦横に走る、八雲立つ山々の緑と多様な水域に恵まれた「水の都」です。

美しい自然と文化を育む「水」

松江は古代出雲の中心地として早くから開け、奈良時代には国庁や国分寺が置かれました。江戸時代には松江城の城下町として陸路・水路ともに整備が進み、多くの旬の食材が集まる流通の拠点としても発展しました。

観光スポットも多く、2015年(平成27年)に国宝に指定された松江城は、現存する全国12天守の一つで、羽を広げたように見える入り母屋破風の屋根から「千鳥城」とも呼ばれています。また、日本人の心と文化を世界に伝えた小泉八雲(ラフカディオ・ハーン)が愛した地としても有名です。

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観光で出かけたら必ず訪れたい、松江の「水」にまつわるスポットはとても多いのです。

水に関連した見どころも豊富で、宍道湖の湖面をオレンジ色に染める夕日は必見の美しさです。国宝松江城のお堀を50分かけてゆっくり船で巡る「堀川遊覧船」は、堀川に架かる橋の高さに合わせて屋根が下がる工夫などもあり、楽しいひとときとなることでしょう。

また、「八重垣神社」は、八塩折の酒を飲ませて八岐大蛇(やまたのおろち)を退治した神話の中で、素盞嗚尊(すさのおのみこと)が大蛇から救った稲田姫(いなたひめ)と夫婦となり、宮造りした場所とされることから縁結びの神社として知られ、境内の「鏡の池の縁占い」も人気があります。

『出雲風土記』に記され、日本最古の湯の一つに数えられる美肌の湯「玉造温泉」も、旅の大きな楽しみです

松江で生まれる美食と、美酒

この地では、松江藩松平家七代藩主・松平治郷(不昧公)によって広く普及した「茶の湯の文化」により、豊かで洗練された食文化が育まれました。

日本一の漁獲量を誇る宍道湖のしじみ、挽きぐるみの蕎麦を丸い器に小分けにして盛る割子そば、不昧公の好物であったという鯛のそぼろや裏ごしした卵などをだし汁とともにご飯にかけて味わう鯛めしのほか、さまざまな美食が生まれました。また、不昧公が名付けた「若草」をはじめとする和菓子も作られています。

同時に、豊かな食文化が息づくのある松江ならではの、食事とともに「ほっと、こころ和む時間」を生み出す日本酒が醸されてきました。この豊かで洗練された「おいしさ」を求め、より良い原料を集め、技術を高め続けてきた蔵元が、松江市のほぼ中心に蔵を構える米田酒造です。

米田酒造は1896年(明治29年)に松江で創業しました。原料を米と水とする日本酒は、その約8割が水であり、水質の善し悪しが日本酒に大きな影響を与えます。

米田酒造では、三十数年前まで松江の市街地の井戸水を仕込み水としていましたが、町の発展などに伴いそれが難しくなってきました。そこで酒造りに適した良質の水を探し求め、ようやく見つけたのは松江市郊外にある山の麓の斜面、竹藪の下の岩の間からこんこんと出ている湧水です。酒造りに適したやや軟水で、ふっくらとした旨いお酒を仕上げることができました。この天の恵みの水と、徹底したこだわりで造られる米田酒造の日本酒。これからも蔵人に脈々と受け継がれ、街と人によって育まれた「伝統の味」として愛され、親しまれていくことでしょう。

ちなみに、米田酒造おすすめの楽しみ方は、食事と一緒に飲む「酒食スタイル」とか。旬の食材を日本酒を合わせれば、長く続くおうち時間が「ほっと、こころ和む時間」として、少し豊かになりそうです。

【文章引用元】
・交通新聞 2021年6月25日発刊『美酒漫遊の㊴ 不昧公ゆかりの地 松江の水』より

【参考URL】

・交通新聞電子版 https://news.kotsu.co.jp/
・米田酒造株式会社(島根県松江市)https://www.toyonoaki.com/

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