日本酒誕生にまつわるお話

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昔、日本酒は神聖な捧げ物で、薬でもありました。日本酒の起源にはいろいろな説があります。日本酒の誕生について、思いを馳せてみませんか?

『君の名は。』にも登場した「口噛みの酒」

3世紀の中国の日本で初めて誕生した酒は、なんとワインだったそうです。長野県の遺跡で出土した縄文土器の中から山ブドウの種が見つかったのですが、山ブドウがその中で自然に発酵してワインになったようです。日本酒造りが始まるのは、稲作が伝来した弥生時代以降のこと。

3世紀の中国の書物『魏志倭人伝』には日本人は酒を飲み、酒が神事に深くかかわっていたことが書かれ、酒造りは巫女の仕事だったと推測されます。
8世紀以降に書かれた日本の書物によれば、今の鹿児島県で「口噛みの酒」(生米を噛んで容器に吐き出し、一晩以上の時間をおいて発酵させます)という方法で酒造りをしていました。「口噛みの酒」は、映画『君の名は。』(2016年)にも登場したので、ご存じの方もいるかもしれませんね。

その昔、日本酒はキ、ミキ、ミワ、クシなどと呼ばれていました。今でも「お神酒(みき)」という言葉がありますね。クシには「薬」という解釈があり、「怪(く)」「寄(く)し」とも書かれています。人々は“酔う”という感覚を不思議がっていたようですね。

酒は八百万(やおよろず)の神のために造られた?

島根県出雲地方の「佐香(さか)神社」では、旧暦の10月10日、全国から出雲大社に集まる八百万の神様の労をねぎらうため、酒と農業の神様である久斯之神(くすのかみ)が日本酒を醸して振る舞ったとされています。また出雲地方には、スサノオノミコトがヤマタノオロチに、「八塩折(やしおり)の酒」という、とても濃く強い酒を飲ませて退治したという逸話も残っています。

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『君の名は。』と同じく2016年の映画『シン・ゴジラ』では、「ヤシオリ作戦」という作戦名に、この逸話のモチーフが使われていましたね。

酒の神を祀る神社の中では、京都の「松尾大社」、奈良三輪山の「大神(おおみわ)神社」が有名ですが、そのルーツは「佐香神社」だという説が有力です。三輪山の杉の葉で造られた杉玉は「酒林(さかばやし)」と言い、今では新酒ができる時期に蔵元や酒販店の軒先に飾られます。

どぶろくは日本酒の原点

どぶろくは「濁酒」と書きます。古代では米は貴重で、酒を濾した部分だけを飲むことはできませんでした。そのため、濾さずに米粒がたくさん残った状態が普通でした。今では、どぶろくはランクの低い酒とされることがありますが、どぶろくこそ日本酒の原点なのです。

 

麹を使った日本酒はどこから?

麹を使った酒造りは『古事記』の記載から、中国から伝わったとされていますが、一方で、麹による酒造りは日本独自に開発されたという説もあります。
中国発祥なのか、それとも日本発祥なのか、古代に思いを巡らせてみるのも、日本酒を楽しむ物語の一つとなるでしょう。


 

●分かち合いの美意識

昔から日本人は、食べ物や飲み物を神に捧げ、祈った後に神の前で分け合って食べるというルールを定めてきました。これが神と人が共食する「直会(なおらい)」で、食事作法の基本でした。
日本酒も同様です。平等に分かち合い、食事を通じてコミュニケーションを図ることが日本の文化であり、日本人の美意識といえるしょう。

●酒の字の起源

酒の字の「酉」は「醸」「醗」「酵」のように、酒に関連した言葉に使われますが、これは酒を醸す壺が半ば土に埋まっている象形文字が起源です。古来、酒は薬とされていたので、医学の「医」の旧字体「醫」の部首にも酉が使われているのです。

●日本酒の容量の量り方

日本では、明治時代にメートル法に変わるまで、尺貫法が使われていました。日本酒の容量を表す時には、今でもこの尺貫法の単位が使われています。
ちなみに、飲食店の軒先に「一斗二升五合」と書かれた板を見かけることがありますが、あれは「ご商売益々繁盛」と読む縁起板で、一斗=五升の倍、二升=升・升、五合=半升から来ています。

【参考】
・『酒仙人直伝 よくわかる日本酒』(NPO法人FBO)
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さけぱる編集部
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