ー山口ー下関の地下160㍍「宝の水」ー下関酒造ー

今回は、おいしい海の幸に恵まれ、観光地としても知られた山口県「下関」をご紹介します。

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「下関」と聞いて真っ先に思い出すのは「河豚(ふぐ)」をはじめとする魚介のおいしさ、という方は多いのではないでしょうか。

山口県の下関は三方向を海に囲まれた港町、お魚天国です。最も活気ある唐戸市場では多数の仲買さんが寿司コーナーを出し、取れたての新鮮なネタを使った寿司を競って販売しています。購入したものをそのまま関門海峡を一望しながら食べられるのも魅力のひとつ。このような体験を求める観光客で、市場はいつもにぎわっています。

さて、この美味しい魚に合うようにと生み出されたお酒があるのをご存じでしょうか。関門海峡のすぐ近く、本州最西端に位置する酒蔵で、1世紀近くにわたり酒造りを続けてきた下関酒造が醸した「海響」という日本酒です。

※画像:下関酒造公式サイトより(2022年2月1日現在)

海産物を使用した和食に合うようにと開発された日本酒は、日本の豊富な海の幸を引き立てる味わい。それもそのはず。下関酒造では、世界中の食文化に寄り添うことを掲げ、香り、味わい、余韻、その全てが食とのペアリングにおいて最適化される品質を目指しているとのこと。
日本酒は名脇役であるという考えを重視し「酒と食と心の感動」を企業理念に、創業銘柄の「関娘」以来、さまざまな酒造りを行っているそうです。

分厚い花崗岩に阻まれていた「誰も知らない仕込み水」

では、この下関酒造の酒に使われている「誰も知らない仕込み水」について、少しご紹介しましょう。

関門海峡の成り立ちは古く、付近には約9000万年前の花崗閃緑岩が分布します。その花崗岩層が、蔵直下160mに今も眠っているのです。
この分厚い花崗岩は、蔵元四代目の時代までは削岩のプロでさえ砕くことができなかったそうですが、元関東軍幕僚であった五代目が、攻撃は最大の防御という考えの下「地球の裏側まで掘り進めろ」と大号令を掛けました。
削岩業者を鼓舞し掘り続けた結果、ついに半世紀もの間砕くことの出来なかった岩盤を貫きます。こうして得られた伏流水が、分厚い花崗岩でゆっくり時間をかけて濾過された「誰も知らない仕込み水」。水質は、成分バランスのとれた「中軟水」で、柔らかな酒に仕上がるそうです。

酒どころとはいえないこの地で下関酒造が創業したきっかけは「自分たちが栽培した米で、地元に誇れる酒を生み出そう」という、445 名の米農家達の強い決意でした。

海峡の町には見どころがたくさん!

また、下関はおいしい海の幸や市民が立ち上げた酒蔵が特徴的なだけでなく、歴史に彩られた町としても知られ、訪れた際にはぜひ立ち寄りたいスポットが数多くあります。

まず関門海峡を臨んで建つ朱塗りの神宮「赤間神宮」。源平最後の合戦、壇ノ浦の戦いで平家が源氏に敗れた際、わずか8歳で入水(じゅすい)した安徳天皇を祀(まつ)っています。ラフカディオ・ハーン(小泉八雲)の怪談「耳なし芳一」の舞台でもあり必見です。
宮本武蔵と佐々木小次郎の決闘で有名な巌流島(船島)も下関。さらに幕末には志士が集い、倒幕のために高杉晋作が奇兵隊を結成したのもこの地です。

地元の熱い想いから生まれた下関のお酒を食事とともにいただきながら、遠い海峡の町と、その歴史に心を遊ばせるのも、贅沢な時間の使い方だと思う今日この頃です。

【文章引用元】
・交通新聞 2021年9月24日発刊『美酒漫遊の旅㊷ 下関の地下160㍍「宝の水」』より

【参考URL】

・交通新聞電子版 https://news.kotsu.co.jp/
・下関酒造 https://www.shimonoseki.love/

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